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プライマリケア・家庭医療の

見学実習報告

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実習先

3131516日 松村医院(松村真司先生)

 

2001426

慶應義塾大学医学部5

 


松村医院での実習

 松村医院は世田谷区の住宅地にある医院で、内科・小児科を中心に地域住民の健康管理、健康相談をみるよろず相談所、「交番」(松村先生いわく)となっている。高価な検査器械はおかず、患者さんとのお話、問診、視診、聴診、打診、触診や血液検査や便検査などの簡単な検査に徹し、出来るだけ患者さんとの対話に重点をおいている。先生は大学での研究、教育も行っているので診療時間は夜間に重点をおいている。

 

(1)日程

@313日(火)

9001230 (午前)診療の見学

1230200 昼食・休憩

200430 (午後)診療の見学

430700 往診

夕食・休憩

700900 (夜間)診療の見学

 

A315日(木)

1000200 医院の中の見学

        玉川医師会、検査室の見学

        昼食

200430 (午後)診療の見学

430700 夕食、休憩

 

B316日(金)

655940 (夜間)診療の見学

940〜 お話

 

(2)実習内容

@診療の見学

診察室で先生の診療を端で見学させていただいた。松村医院には子供から老人まで幅広い人が来診するが、ほとんどは近隣の人々で、初診は少なかった。高血圧の管理、高脂血症、不整脈、風邪が多いということがよくわかった。ほかにも甲状腺機能低下症、慢性肝炎、壊死性リンパ節炎、皮膚炎、膀胱炎、抑うつ神経症、過敏性腸症候群の人が訪れた。病気以外に、検診や予防接種、書類の記載、健康相談で来院される人もいた。小児から老人まで幅広い年齢の人々が訪れていた。印象に残ったのは家族単位でカルテを保存していて、家族で受診することがあったり、松村先生が患者さんの家族の健康を尋ねたりしていたことだ。病院医療では出来ない医療をじかに感じることが出来た。

患者さんの話し方、振舞い方は本当に様々で、せっかちにしゃべる人もいれば雑然と話す人もいる。そういう人々にも笑顔で適切に先生が対処しているのも印象的だった。患者さんのほうにからだ全体を向けて話を聞いていたところが患者さんにしっかり話を聞いてもらえているという安心感を与えているようであった。

 前述のように先生は十分な診察と鑑別診断で不必要な検査を減らそうというお考えで、私は最初は大丈夫なのかと不安だった。しかし、3日間見学して、診療所側のメリットはともかく、患者さんにとっても良い点があるのではないかと思った。例えば、大きな機器をいれていないため、かえって患者さんにとってはあそこへ行けば検査漬けにされない、きちんと話を聞いてもらえるという安心感や、設備が簡素で人の移動が少なく静かだ、患者さんも検査のために動き回らなくて良いというメリットがあるのではないだろうか。もちろん、きちんと検査をしてもらいたいという方には不満であろうが。

 

A医院内の見学

医院内の待合室、診察室、薬剤室を見せていただいた。小さいながらも清潔で簡素で、雰囲気が良かった。待合室に医院に通っている患者さんの作った小物を飾ったり、季節ごとの色紙を飾ったり、適切な医療情報を掲示したり、細かな配慮がなされていた。

薬剤室では、棚の薬剤やレセプトのソフト、カルテのケースを見せてもらった。カルテは家族でまとめたり、よく来診する人としばらく来診していない人に分けるなど工夫がなされていた。今までにまったく想像していなかったことは、健康保険と国民健康保険の区別が重要でカルテもそれぞれ違う色にしていたことである。今まで私は、医療は診断から治療までというとらえ方だったが、治療のあとにもレセプトなどの業務があり、しかも結構手間をとるということを実感することが出来た。

 

B玉川医師会メディカルセンターの見学

玉川医師会メディカルセンターは医院の近くにあり、案内していただいた。松村医院では前述のとおり専門的な検査は行わないので、玉川医師会に胃カメラ、レントゲン検査、超音波、CTなどを依頼している。実際の検査室は外からしか見ることが出来なかったが、松村先生から医師会について伺った。私は極端に言えば、医師会は新聞で報道されるように政治的な自分たちの利益のみを追求する団体というイメージを持っていたが、先生から勤務医から開業医にかわったときに、診療報酬や保険医療などを医師会に教わり、とても助かったと聞き、医師会は新聞で批判されているのは一面にしか過ぎず、大事な社会的な役割を果たしているということがわかった。

 

(3)まとめ

 初めて、患者としてではなく実習生として診療所を見学して、いろいろな驚きや発見があった。

 まず、開業医の雰囲気を知ることが出来た。私は開業医といえば、これまで患者として接した開業医や医学部の講義で出てくる開業医のイメージしかなかった。それは「おじいさんが、殺伐とした診察室で、あまり考えずにとりあえず抗生物質やビタミン剤を処方する」という悪いイメージであった。今回の松村医院での実習は、「若い先生が、行き届いた清楚な診察室で、患者さんの話を良く聞き、鑑別診断を考えて、費用効果分析やEBMをも考慮して治療を決断する」という一つの開業医の理想的なモデルを知ることが出来て、私の認識がいかに狭いものか思い知らされた。しかし、逆に一般の人々でも良心的な医者に運悪くめぐり合わない人々がいるということでもある。

 診療においては、common diseaseをみる基本的臨床能力の必要性を実感した。私自身のこの1年間の臨床医学の勉強方法の足りないところも痛感した。これまでは、とりあえず多くのことを漫然と覚えようとしてどれも曖昧な記憶になってしまう勉強の仕方をしていた。やはりそれでは薄っぺらい思考力のないあたまになってしまうので、診察診断学と鑑別診断をきっちり身に付け、ありふれた疾患と重篤なありうる可能性のある疾患について重点的に頭に入れたほうが良いと感じた。

 実習して気が付いたことは、開業医の業務についてである。診療以外にレセプトや書類の記入などの仕事も多いということである。昔と比べれば今はパソコンのソフトで点数の計算から書類の作成まで出来て時間がかなり節約できるようになったそうだが、それでも時間をとられる仕事であるように見えた。診療後にもレセプトのソフトの入力の仕事があり、医療は患者さんのケア以外にも保険という経済的な側面を持っていることが実感できた。

 見学以外にもいろいろとお話を伺えた。進路の問題、総合診療、EBM、患者・医師関係についてなど、とても刺激的だった。私の友人にはこのようなことに関心を持っている人はいなかったので、これまでは本などの情報源にしか頼らざるを得ず不安だったが、実際に総合診療の道を実践しておられる先生のお話はたいへん勇気づけられた。今回の実習で診療所を見学することが出来た上に、先生と長時間お話をさせていただくことができてとても充実した実習となった。